第一回International Auto Film Festaにてノミネートされた作品を応募順に紹介しています。今回は「Solpor」スペインからの応募作品。監督はSusana Alba氏。
この作品はシトロエンZXで車乗生活をおくる中年男のショートムービー。
ハイウェイのパーキングの様な場所からストーリーは始まる。男性のこの状況が自ら望んだものではないことは、愛車シトロエンZXのコンディションの悪さから読み取れる。ストーリーが進んで見えてくるのは男性の家族の気配、だが・・・、結末はストーリーを見ていただきたい。
この映像の評価として審査時に盛り上がったのは「クルマの選択の素晴らしさ」について。シトロエンZXというクルマがその男性を上手く表現している。
シトロエンZXと言えば2023年現在、既にデビューから30年が経つ。個人的には当時パリ・ダカールラリーでパジェロと競い合いながら走るプロトタイプの姿が記憶に残っている。市販車とは全く異なる外見ながらシトロエンZXの車名はそこで知った。
実際に訪れたことはないので欧州での当時の様子は想像するしかないが、市販車としてはサイズ的にも丁度よい大衆車という位置づけだと思う。
映画に登場するシトロエンZXのヤレ具合も生々しく、車内に目を向けるとそこにある演出がまた素晴らしい。車上生活が漂う荷物が満載ではあるが、ダッシュボードに子どもが貼ったであろうシールがあったり、ぬいぐるみなのか小物も馴染んでいる。カーステレオも社外製の様子。これらから、このクルマが送ってきたであろう長い時間を読み取れる上に、クルマ自身のリアリティを増している。
洗濯物を吊るしたり夜は窓を塞いだりと、数々の生活の工夫が見られるのも男性が長い時間を経過したリアルな姿でしかない。
映画というストーリーに集中できるのも、こうした演出が生み出す影響が大きいと思う。映画やテレビドラマの中で、スポンサータイアップで真新しい劇車が使われたり、妙な小細工でマスクを施しメーカー不明を装うことがあるが、むしろそれが気になってストーリーに集中できないことがある。
この映画を見て、それらに感じていた違和感が解決した。クルマも映画に欠かせない役者のひとりなのだ。
監督はまだ若い。この脚本とキャスト、撮影チームを率いてこの世界観を作り込むのは相当の経験と度胸が無いと難しいと思う。それを考えると本当に凄い才能を感じる。彼女はこれからどんな作品を生み出していくのだろうか。(清水)
この作品はfesthome経由で応募されました。
第二回の募集は2024年1月1日から開始。オフィシャルサイト、FilmFreeway、festhome経由での応募が可能となります。