思い起こせば、いまからちょうど1年前、クリエーターの清水喜之氏から、「クルマをテーマにした映画祭を立ち上げたい」という相談がありました。清水氏とはこれまでクルマ関係の映像制作で何度か一緒に仕事をしたことがありましたが、自ら映画祭を立ち上げるという壮大な野望(!?)には正直驚くとともに、そんなことができるのか半信半疑だったことを覚えています。
しかし、清水氏の熱い想いに耳を傾けるうちに、いまこの時代だからこそクルマの映画祭が必要なのだと思い始めるようになったのです。
私自身、自動車情報を発信する“モータージャーナリスト”を仕事としています。最近ではメディアや専門家個人による動画を用いた情報発信が増え、また、手軽に動画制作が楽しめることから、専門家以外による情報発信も盛んです。
おかげで、カーライフをより楽しむために利用したり、知的好奇心を高めたりするには格好の材料ですが、あくまでそれらは“情報”であり、後々までクルマ文化を伝える“作品”とは別なもの……というのが清水氏の考えでした。
文化としてのクルマを、後世に語り継ぐような作品を発表する場を設けたい。情熱をかけて作品づくりに挑むクリエーターに出逢いたい……そんなクルマ好きクリエーターの想いに共感した私は、微力ながらInternational Auto Film Festa(以下、IAFF)のスタートに協力することにしたわけです。
そこからわずか3カ月で、第1回の作品募集が始まりました。準備や告知の時間が短かったにもかかわらず、11カ国から46作品の応募があったのはうれしいかぎりです。それらをすべて拝見し、点数をつけていくという作業のなかで、個人的に好感を抱いたのが、「Mein Volkswagen T1 Samba Bus Baujahr 1966」。
日本でもおなじみの“ワーゲンバス”を採りあげたショートフィルムですが、単なるクルマ紹介ではなく、このクルマとオーナーとの関わりが微笑ましく映し出されており、「ワーゲンバスがある生活って憧れる」とか「こんなカーライフを送ってみたい」と自然と感じられる“作品”でした。
今回、IAFFアワードを受賞した「”LOVE_4_RAV” [28-year one-owner car, the story of Toyota RAV4 L]」もまた、家族とクルマの暖かいつながりが印象的な作品でした。
どちらの作品も、街中で同じモデルを見かけたときに、きっと思い出すに違いありません。
そんな、心に残るクルマの映像が今後増えていくことに期待しつつ、私たちはいま第2回の開催に向けて準備を進めています。クリエーターの皆さんからの自信作が拝見できることを、いまから楽しみにしています。(生方)
第二回の募集は2024年1月1日から開始。オフィシャルサイト、FilmFreeway、festhome経由での応募が可能となります。